2026年10月8日にDeepLのTranslate Text API本文と翻訳メモリのガイドを再確認した。contextは翻訳せずに追加文脈として使われ、glossaryは言語ペアとsource_langをそろえて用語を制御する機能であり、APIオプションを一般LLMの精度保証へ読み替えない。原文の数値・固有名・タグ・用語を機械出力と照合し、文書ごとに対象読者、用語集、形式、例外、人的レビュー、リリース条件を記録してから品質を評価する。
AI翻訳の改善は「上手に訳して」と頼むだけでは終わりません。原文の曖昧さ、読み手、用語の対応、数字や否定の保持を分けて確認します。この記事の11のテキスト枠は依頼文や著者が作った訳の例示であり、API・実モデルで得た出力や翻訳精度の実測ではありません。
30秒で要点
- 原文と利用場面、読み手、用語、出力形式を先にそろえると、訳を照合する基準ができます。正確さの保証ではありません。
- 一般的なLLMへの指示と、DeepLのcontextパラメータや用語集は別物です。利用先の機能へ分けて渡します。
- 三つの例で技術・マーケティング・学術の訳を確認します。数値、限定表現、用語は原文へ戻って点検します。
文脈がないと、誤りかどうかも決められない
bankという語を見ただけでは、金融機関と川岸を区別できません。訳語を機械的に置換するより、原文の前後と場面を示します。
原文: He sat on the bank.
文脈なし: bankの意味を確定しない。前後の文章を確認する。
追加文脈: He was watching the river.
例示訳: 彼は川岸に座っていた。
金融機関の文脈なら別の訳が必要。これは実モデルの出力ではない。
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| 起きやすい問題 | 点検する場所 | 改善する入力 |
|---|---|---|
| 文法が自然でも意味が違う | 主語、否定、条件、修飾の対象 | 前後の文章と、曖昧な箇所の質問 |
| 用語が揺れる | 同じ概念の訳語 | 言語ペアと用語対応の表 |
| 読み手に合わない | 丁寧さ、専門性、文体 | 読者と媒体、文体の指定 |
| 原文にない効果を加える | 数字、比較、断定の強さ | 追加禁止と、未確定事項の明示 |
五つの要素で依頼を組み立てる
役割: 何を点検する翻訳者か
文脈: 読み手、媒体、前後の文章
タスク: どの言語からどの言語へ何を訳すか
制約: 用語・数値・否定・条件を保つ。原文にない事実を足さない
出力形式: 訳文と、確認が必要な箇所を分ける
たとえば基本形は次のように書けます。足りない情報を、訳文の流暢さだけで埋めさせないのが狙いです。
英語を日本語へ翻訳してください。
読者はReactを学び始めた開発者です。原文の技術的な意味を保ってください。
原文: React is a JavaScript library for building user interfaces.
形式: 訳文。意味を確定できない場合は、別欄で質問。
五要素は著者の整理法で、製品固有の必須構文ではありません。依頼の改善そのものはプロンプトエンジニアリングの基本でも扱っています。
context・指示・用語集を分ける
DeepLのcontextの説明では、contextは翻訳対象を理解するための追加の内容です。そこへ一般LLM用の命令文を入れることとは区別します。多言語用語集の仕様は、言語ペアの辞書として用語対応を扱っています。今回は両APIを実行していません。表が収まらない場合は、横にスクロールできます
| 渡すもの | 例 | 注意 |
|---|---|---|
| 翻訳対象 | ボタンに表示する短文 | 本当に訳す文字列を明示する |
| 文脈 | そのボタンが載る画面や前後の説明 | 利用先によっては指示ではなく参考内容 |
| 用語対応 | 英語と日本語の指定語 | 言語ペア・活用・文中での適合も確認 |
| 文体や形式の指示 | 丁寧体、訳文と質問を分ける | 対応する機能や入力欄を公式仕様で確認 |
マーケティング文なら、次のような背景を整理できます。利用先に応じて「背景の内容」と「守る条件」を別に渡してください。
背景: B2Bソフトウェアの紹介ページ。読み手は初めて検討する担当者。
目的: 機能を理解してもらい、デモの案内を検討できるようにする。
用語: CTA=行動喚起、ROI=投資利益率。
守る条件: 原文にない実績、削減率、保証、比較優位を追加しない。
著者が作った英日用語対応の例:
machine learning -> 機械学習
deep learning -> 深層学習
neural network -> ニューラルネットワーク
natural language processing -> 自然言語処理
略語の初出や既存の社内表記との整合は別に確認する。
文脈や用語集にも、入力してよい情報だけを使います。秘密情報・個人情報をそのまま外部サービスへ渡す前に、利用規則や契約を確認してください。
四つの文体は、正確さと別に選ぶ
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| 文体 | 想定する場面 | 保つべきもの |
|---|---|---|
| フォーマル | 対外文書・案内 | 責任範囲、条件、丁寧さ |
| カジュアル | 親しみやすい読み物 | 意味、距離感、過度な省略の回避 |
| 技術 | 仕様書・開発者向け説明 | 用語・数値・識別子・操作条件 |
| マーケティング | 商品紹介・広告 | 原文の主張の強さ、対象、根拠 |
文体を変える依頼は、事実を変える許可ではありません。「魅力的に」と頼んだ結果、可能性が保証に変わっていないかを確認します。
例1:技術文書を、初学者へ訳す
役割: 技術文書の英日翻訳を点検する担当者。
文脈: Reactの入門資料。読者はJavaScriptの基礎を学んだ人。
タスク: 次の一文を日本語へ訳す。
原文: React is a JavaScript library for building user interfaces.
制約: ReactとJavaScriptはそのまま。libraryをframeworkへ変えない。
出力形式: 訳文と、用語を選んだ理由を別に示す。
著者による例示訳(API出力ではない):
Reactは、ユーザーインターフェースを構築するためのJavaScriptライブラリです。
点検: libraryを「ライブラリ」とし、原文にない用途や性能を足していない。
例2:マーケティング文の効果を盛らない
次の原文自体が架空の商品説明です。その主張の真偽を検証した例ではなく、訳す段階で断定を強めないための教材です。
役割: B2B紹介文の英日翻訳者。
文脈: 架空の業務支援製品の説明。落ち着いた丁寧体。
原文: Our solution can help improve efficiency and reduce costs.
タスク: 日本語へ訳す。
制約: can helpという可能性を保つ。削減率、保証、導入実績を足さない。
形式: 訳文と、追加せずに残した条件を別欄にする。
著者による例示訳(API出力ではない):
当社のソリューションは、効率の改善とコストの削減に役立つ可能性があります。
点検: 実際に改善した、必ず削減する、何%削減するといった主張へ変えていない。
例3:学術文の数値と限定を保つ
役割: 研究要約の英日翻訳を点検する担当者。
文脈: 以下は翻訳練習用に作った架空の英文で、実在研究の結果ではない。
原文: The estimated effect was 0.25 (95% CI [0.15, 0.35], p < 0.05).
タスク: 数値と記号を保って日本語へ訳す。
制約: 因果、実務上の重要性、再現性を追加しない。
形式: 訳文と、保全した数値・記号の一覧。
著者による例示訳(API出力ではない):
推定された効果は0.25でした(95%信頼区間 [0.15, 0.35]、p < 0.05)。
照合対象: 0.25 / 95% / 0.15 / 0.35 / p < 0.05
点検: 翻訳の一致は、統計解析や研究の妥当性の検証とは別。
準備・翻訳・照合を一巡させる
- 準備:原文の版と範囲、言語ペア、読み手、用語対応をそろえる。原文の不明点は先に質問する。
- 翻訳:入力と出力を対応づけ、訳の候補を作る。記事内の例示訳を製品の実績と取り違えない。
- レビュー:原文と並べ、否定・条件・主語・数字・単位・固有名詞・用語を照合する。
- 修正と再照合:誤りの箇所と理由を伝え、直した部分だけでなく周辺も確認する。
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| 照合欄 | 記録する内容 |
|---|---|
| 原文の位置 | 段落・文・版 |
| 問題 | 意味の反転、抜け、余分な主張、用語揺れなど |
| 採用した修正 | 元の意味を保つ訳と判断理由 |
| 未解決 | 原文の曖昧さ、専門家への確認事項 |
合否は流暢さだけで決めません。専門的・対外的な文章では、分野を理解する人の確認範囲を決めます。AIコンテンツの品質管理と、曖昧さや失敗例を集める例外セットの作り方を使うと、一回の訳を直す作業を次の点検へつなげられます。