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データ分析・KPI

自然言語でデータに聞ける、は「何を数えるか」が決まっている前提で成り立つ|AI分析ツールの導入前に揃えるもの

2026年9月26日
9分で読めます
自然言語でデータに聞ける、は「何を数えるか」が決まっている前提で成り立つ|AI分析ツールの導入前に揃えるもの

この記事の結論

自然言語でデータに質問できるAI分析ツールが自動化したのは、クエリを書く手間であって「何を数えるか」の合意ではありません。 OpenAI公式リリースノートのData pluginの項目を手がかりに、指標定義と権限の範囲が答えをどう左右するかを整理し、ツールの導入前に社内で確かめておく最小の手順を示します。

自然言語でデータに聞ける、は「何を数えるか」が決まっている前提で成り立つ|AI分析ツールの導入前に揃えるもの

「先月の売上はいくら?」と日本語で聞けば、AIがデータを調べて答えてくれる。SQL(データベースからデータを取り出すための言語)を書けない人でも、自分で数字を確かめられる。こうしたツールの話を聞くと、社内で「その数字、どこから出したの?」と揉める場面が減りそうに思えます。

ところが、揉めている理由が「数字を出す手間」ではなく、「何をその数字として数えるか」の食い違いにあるとしたら、どうでしょうか。質問を日本語で受け付けてくれても、その食い違いは残ります。

この記事では、OpenAIが公式のリリースノートで紹介した「Data plugin」を手がかりに、自然言語で分析できるツールが自動化したものと、自動化していないものを分けて考えます。特定の製品を評価する記事ではありません。この種のツールを入れる前に、組織の側で何を揃えておく必要があるかを整理するための記事です。

30秒で要点

  • OpenAIのリリースノートは、2026年9月10日付で「Data plugin in ChatGPT Work and Codex」を掲載した
  • 接続した業務データへの質問・変化の調査・ダッシュボードやレポートの作成ができ、チームの指標定義を持ち込めると説明されている
  • クエリは、接続したアカウントの既存の権限で実行されるとされている
  • 筆者の解釈では、指標定義はツールが決めるものではなく、利用者が用意する入力にあたる
  • 導入前に、よく使う指標の定義を関係者に1行で書いてもらい、一致するかを確かめる

用語意味
自然言語BI日本語や英語などの普通の文章で質問すると、データを集計・分析して答えを返す仕組み。BIはビジネスインテリジェンス(業務データを集計・可視化して判断に使うこと)の略
クエリデータベースからデータを取り出すための命令
指標定義ある数字を何から計算するかの決まり。分子・分母・期間・除外する条件などを含む
KPI重要業績評価指標。目標の達成度を測るために、組織が重視する数字
権限誰がどのデータを見られるかの設定

リリースノートには何が書かれているか

扱うのは、OpenAI公式のChatGPTリリースノートにある、2026年9月10日付の項目「Data plugin in ChatGPT Work and Codex」です。この記事の内容は、2026年9月15日時点で取得されたこの項目の記載に基づきます。リリースノートは随時更新されるため、現在の記載と異なる可能性があります。

この項目が説明していることは、次の3つです。

  1. 何ができるか: ChatGPT WorkとCodexで、接続した業務データを分析できる。業務上の質問をする、変化を調べる、対話型のダッシュボードやレポートを作る、といった使い方が挙げられている
  2. 何を持ち込めるか: 追加の質問で分析を精緻化でき、チームの指標定義(metric definitions)やその他の業務コンテキストを持ち込める
  3. どう動くか: プラグインのディレクトリからDataをインストールし、@Dataで会話を始める。接続先はセットアップや認可が必要な場合があり、クエリは接続したアカウントの既存の権限で実行される

この記事が注目するのは、2と3です。

「指標定義を持ち込める」が示していること

最初にリリースノートを読んだとき、「指標定義を持ち込める」は便利な追加機能の1つに見えました。しかし、考えるうちに見え方が変わりました。

指標定義を持ち込めるということは、裏を返せば、指標定義は利用者の側が用意するものだということです。ここからは筆者の解釈ですが、ツールが担っているのは「定義に沿ってデータを取り出して計算する」ところで、「その組織にとって売上とは何か」を決めるところではありません。なお、リリースノートは、ツールが定義を一切推定しないとまで書いているわけではありません。

仮の例で考えてみます。「先月の売上はいくら?」という質問に対して、正しい答えは1つに決まるでしょうか。

  • 受注した日で数えるのか、請求した日で数えるのか、入金された日で数えるのか
  • 返品やキャンセルを差し引くのか
  • 税込か、税抜か
  • 無償で提供した分や、社内向けの取引を含めるのか

たとえば、営業部門は受注した日で、経理部門は計上した日で数えている組織を考えます。どちらも「売上」と呼んでいて、どちらも間違ってはいません。ただ、同じ言葉で違うものを数えている。

この状態で自然言語BIに「先月の売上は?」と聞くと、ツールはどれか1つの数え方を選んで答えるか、持ち込まれた定義に従って答えます。定義が組織の中で揃っていなければ、どの答えが返ってきても、別の部門からは「その数字は違う」と言われます。

自動化されたのはクエリを書く手間で、何を数えるかの合意ではない。この区別が、この記事の中心です。

権限の違いが、答えの違いになりうる

もう1つ注目したいのが、「クエリは接続したアカウントの既存の権限で実行される」という説明です。

既存の権限を引き継ぐのは、見てはいけないデータを見せないための、まっとうな設計だと考えられます。ただ、ここからの推論として、次のことが起こりえます。

  • 部門長は全社のデータを見られるが、担当者は自分の部門のデータしか見られない
  • 2人が同じ「先月の売上は?」という質問をする
  • 参照できる範囲が違うので、集計の対象が変わり、返ってくる数字が変わる

どちらの答えも、それぞれの権限の範囲では正しい計算です。しかし会議の場で2つの数字が並ぶと、「どちらが正しいのか」という議論が始まります。原因は計算の誤りではなく、集計の範囲が質問文に現れていないことにあります。

これはリリースノートに書かれていることではなく、権限を引き継ぐという説明から筆者が推論したものです。実際にどう振る舞うかは、各組織の設定と使い方によります。

なぜ「日本語で聞ければ揉めなくなる」と感じるのか

この期待が生まれやすい理由を、3つ考えます。

1つ目に、揉めている原因を「手間」だと思いやすい。数字の食い違いが起きたとき、目に見えるのは「誰かがデータを抽出して、表計算で加工して、報告した」という作業の流れです。その流れのどこかで間違えたのだろう、と考えるのが自然なので、作業を自動化すれば食い違いも減ると感じます。

2つ目に、同じ言葉が、同じ定義を指しているように聞こえる。「売上」「アクティブユーザー」「解約率」は、日常的に使う言葉なので、全員が同じものを思い浮かべているように感じます。定義の違いは、数字が食い違って初めて表に出ます。

3つ目に、AIが返す答えは、1つの確定した数字に見える。質問に対して1つの数字が返ってくると、それが「その質問の答え」のように見えます。その数字がどの定義で、どの範囲で計算されたのかは、答えの表面には出てきません。

確かなことと、まだ仮説にすぎないこと

確かなこと(OpenAI公式のChatGPTリリースノートの記載による。2026年9月15日時点の取得):

  • 2026年9月10日付で、ChatGPT WorkとCodexのData pluginが掲載された
  • 接続した業務データへの質問・変化の調査・ダッシュボードやレポートの作成ができると説明されている
  • チームの指標定義やその他の業務コンテキストを持ち込めると書かれている
  • クエリは、接続したアカウントの既存の権限で実行されると書かれている

筆者の解釈・推論:

  • 指標定義は、ツールが決めるものではなく、利用者が用意する入力にあたる
  • 権限の範囲が人によって違えば、同じ質問でも答えが変わりうる

まだ仮説にすぎないこと:

  • 指標定義が揃っていない組織で自然言語BIを導入すると、数字の解釈のばらつきがかえって増える、という見立て。これを確かめた研究やデータを、この記事では確認していません
  • Data pluginの分析の精度や、実際の業務での有効性。この記事では確認していません

導入の前に揃えておく3つのこと

自然言語BIやAI分析ツールを検討しているなら、製品を比べる前に、次の3つを確認しておくことをすすめます。

  1. よく使う指標に、書かれた定義があるか。会議で頻繁に出てくる数字(売上、KPIとして追っている数字など)について、分子・分母・期間・除外する条件が文章で残っているか
  2. その定義を誰が決め、誰が更新するか。定義を変えたいときに、誰の承認で変わるのかが決まっているか。持ち込む定義が古いままだと、ツールは古い定義で正確に計算します
  3. 誰がどの範囲のデータを見られるかを、利用者が把握しているか。自分の見ている数字が全社のものか、部門のものかを、答えを見た人が区別できるか

この3つが揃っていれば、自然言語BIは「揃った定義に沿って、速く答えを出す道具」として働きやすくなります。揃っていなければ、ばらばらの定義で、ばらばらの答えを、速く出す道具になるおそれがあります。

自分でも試せる、最小の検証

ツールを入れる前でも、次の手順で自社の状態を確かめられます。

  1. 会議でよく使う指標を1つ選ぶ(たとえば「先月の売上」「月間のアクティブユーザー数」)
  2. その数字を使う立場の違う3人に、定義を1行で書いてもらう。書いてもらう項目は、何を数えるか(分子)、何に対する割合か(分母)、どの期間か、何を除外するかの4つ
  3. 3人の定義を並べて比べる

3つの定義が一致すれば、その指標は自然言語で聞いても揉めにくい状態にあります。一致しなければ、ツールより先に揃えるべきものが見つかったことになります。どちらの結果でも、1時間かからずに分かります。

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