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LLMO(AI検索最適化)

「指名検索の83%にAI Overviews」は単日の数字|月平均と読み分ける手順

2026年10月27日
13分で読めます

この記事でわかること

指名検索の83%にAI Overviewsが出るという数字を見て、自社の対策を考えている方へ。この83%は2026年9月29日の単日観測値で、同じ調査の月平均は9月73.3%です。単日値と月平均、2つの異なるサンプル、米国デスクトップという条件を分けて読む手順を、出典の記述だけで整理します。

「指名検索の83%にAI Overviewsが表示される」という数字が流れてきたとき、多くの人が次にやることは決まっています。自社のブランド名で検索してみる。そして、出たか出なかったかを確認する。

出なければ安心し、出れば対策を考えはじめます。どちらの反応も、その83%という数字が何を数えた83%なのかを確かめる前に起きています。

出典を開くと、1行目にこう書かれています。2026年9月29日時点で、米国デスクトップの指名キーワードの検索結果82.91%にAI Overviewsが出現した。 この数字は、ある1日の観測値です。

同じ調査の中に、別の数字も載っています。9月の月平均は73.3%。 単日値のほうが約10ポイント高い。

扱わないものを先に置きます。日本とモバイルの出現率は扱いません(出典が米国デスクトップのみを対象にしているためです)。AI Overviewsが出たときにクリック率がどう動くかも扱いません(今回の調査がそれを測っていないためです)。ここで扱うのは、単日値・月平均・別サンプルという3つの数字をどう読み分けるかだけです。

30秒で要点

  • 「83%」は2026年9月29日の単日観測値。見出しは "Currently" と書いているが、本文1行目でこの日付が明示されている
  • 同じ調査の月平均は9月73.3%(8月65.1%、7月61.3%)。単日値と月平均は約10ポイント違う
  • 非指名キーワードの月平均は73.5%・74.7%・78.3%。指名は9月時点でもまだ非指名を下回っている
  • 分母は米国デスクトップのGoogle検索結果232.8M件のクロール(指名92.5M・非指名140.2M)。モバイルと日本は含まれない
  • 「ブランド名検索63/100件」の数字は別サンプル。調査自身が注記しており、月平均の数字と同じ母集団ではない
  • 競合への言及は限定的だった。全文が見えた58件中、競合を論じたのは2件(3.4%)
  • 「指名キーワード」の定義は原典に書かれていない。自社の指名クエリと同一視できない

表が収まらない場合は、横にスクロールできます

用語意味
AI OverviewsGoogle検索結果の上部に出る、AIが生成した要約
LLMO(AI検索向け最適化)AIの回答に自社の情報が使われる状態をつくる取り組み
SEO(検索エンジン最適化)検索結果からの到達を設計する取り組み
指名キーワード自社やブランドの名前を含む検索語。ただし後述のとおり出典に厳密な定義はない
単日値ある1日に観測した値
月平均その月に観測した値を平均した値
パーセントポイント比率同士の差。61.3%から73.3%への変化は12ポイント
クロール検索結果ページを機械的に取得して記録する作業。ここでは観測1件の単位

83%と73.3%は、どちらも同じ調査の数字である

出典はAhrefsの2026年10月2日の調査です。本文を読むと、2つの数字が別の場所に置かれています。

単日値:2026年9月29日時点で、米国デスクトップの指名キーワードの検索結果82.91%にAI Overviewsが出現した。見出しはこれを "Currently"(現在)と表現しています。

月平均:指名キーワードの月平均は、7月61.3%、8月65.1%、9月73.3%。

この2つは矛盾していません。月の中で出現率が上がっていけば、月末の単日値は月平均より高く出ます。9月の平均が73.3%で、9月29日が82.91%なら、月の後半で上がったと読めます。

ただし、どちらを「現在の水準」として扱うかで、判断が変わります。 83%を現在値として使えば「ほぼ全部に出る」と読めます。73.3%を使えば「4回に1回は出ない」と読めます。同じ調査から、違う結論が出ます。

非指名と並べると、増加の意味が変わる

同じ調査には、非指名キーワードの月平均も載っています。

表が収まらない場合は、横にスクロールできます

月指名キーワード非指名キーワード差
2026年7月61.3%73.5%12.2ポイント
2026年8月65.1%74.7%—
2026年9月73.3%78.3%5ポイント

調査は、この差が7月の12.2ポイントから9月の5ポイントへ縮まったと書いています。

並べて見ると、指名検索の数字の性格が変わります。指名は、非指名より低い水準から追い上げている。 そして9月時点でも、まだ非指名を下回っています。

「指名検索にもAI Overviewsが出るようになった」は正しい観察です。しかし「指名検索のほうが出やすくなった」ではありません。この2つは、差の数字を見ないと区別できません。

数字の表現にも注意が必要です。調査は7月から9月の指名の伸びを「12パーセントポイント」とも「7月比で約20%の成長」とも表現しています。ポイントと率は別の単位です。 12ポイントの増加と20%の成長は、同じ変化を2通りに言ったものです。片方だけを引用すると、変化の大きさの印象が変わります。

分母は米国デスクトップである

数字を自社に当てはめる前に、分母を確定させます。

調査は、2026年7月から9月の米国デスクトップのGoogle検索結果232.8M件のクロールを分析したと書いています。内訳は指名キーワード92.5M件、非指名キーワード140.2M件です。

ここから言えないことが2つあります。

第一に、モバイルは含まれていません。 検索結果の見た目と構成は端末で変わりえますが、この調査はデスクトップだけを見ています。

第二に、日本は含まれていません。 米国の検索結果です。言語・市場・競合状況が違う環境の出現率を、この数字から推定することはできません。

したがって、この83%や73.3%は「自社の指名検索でAI Overviewsがどのくらい出るか」の答えではありません。同じ現象を別の市場・別の端末で測ったら違う値が出る可能性を、この調査は排除していません。

「指名キーワード」の定義は書かれていない

分母にはもう1つ、確定していない部分があります。

何を指名キーワードと呼ぶかの定義が、原典に書かれていません。 Ahrefsのツール上の分類を指しているだけです。

これが実務上いちばん効いてきます。自社のSearch Consoleを開いて「指名クエリ」を集計したとき、その集合はおそらく「ブランド名を含む検索語」でしょう。表記ゆれ、サービス名、担当者名、競合名との組み合わせ——どこまで入れるかは、集計する人が決めています。

定義が違う2つの集合の比率を比べることはできません。 「業界の指名検索は83%なのに自社は40%だ」という比較は、分母が同じだと確認できていない限り成立しません。

別サンプルの数字が、同じ記事に混ざっている

同じ調査には、もう1つの観測が載っています。

Interbrand Best Global Brands 2025の100ブランドについて、ブランド名のみの検索を7月から9月に14回、週次で観測したもの。結果は、9月30日に100件中63件でAI Overviewsが出現し、7月1日時点では有効な98件中5件だったというものです。

この63/100という数字は印象的で、引用されやすい形をしています。ただし調査自身が注記しています。これは広い指名キーワード調査とは別サンプルであり、ブランド名のみの検索を対象とする。

つまり、73.3%(月平均・92.5M件)と63%(100ブランド・週次観測)は、同じ母集団の数字ではありません。 片方からもう片方を説明することはできません。

このパネルについて、さらに2つの数字が出ています。63件のAI Overviewsのうち48件(76.2%)が1位に表示され、平均順位は1.49でした。出現したときは、ほぼ最上部に出ているという観察です。

競合に奪われるという懸念は、この調査では小さかった

ここが、この調査でいちばん落とされやすい部分です。

ブランド名検索のAI Overviewsについて、調査はこう書いています。全文が確認できた58件の回答のうち、競合を明示的に論じたものは2件(3.4%)だけだった。 具体例として、ペプシの回答が「コーラ戦争」の説明の中でコカ・コーラに言及し、インテルの回答がTSMCとNVIDIAに言及した、と挙げられています。

さらに、57件の出典一覧のうち、競合所有のサイトは1件だけでした。

「ブランド名で検索したら競合が紹介される」という懸念は、直感的には強い。しかし観測された範囲では、それは限定的でした。懸念の側の数字だけを引用して、この結果を落とすのは、同じ調査の読み方として一貫していません。

一方で、引用先の偏りは別に見えています。出典一覧が見えた57件のうち、Wikipediaが41件(71.9%)、YouTubeが22件(38.6%)、LinkedInが13件(22.8%)、Yahoo Financeが9件(15.8%)、Facebookが6件(10.5%)、Walmartが4件(7.0%)でした。1つのAI Overviewが複数のドメインを引用するため、割合の合計は100%を超えます。

競合に奪われているのではなく、第三者のプラットフォームが引用されている——という構図が、この2つの数字から見えます。

なぜ単日値を「現在値」として読んでしまうのか

この誤読には、構造的な理由が3つあります。

第一に、見出しが単日値を現在形で書いているからです。 調査の見出しは "AI Overviews Currently Appear for 83% of Branded Searches" です。本文1行目に日付が明示されていますが、見出しだけを転載すると日付が落ちます。これは調査の書き方であり、批判ではなく読み分けの材料です。

第二に、丸い数字のほうが記憶に残るからです。 82.91%は83%に丸められ、73.3%は丸められません。流通する過程で、丸められた数字だけが残ります。

第三に、単日値と月平均の差を「どちらかが間違い」として処理したくなるからです。 2つの数字が食い違うとき、人は正しいほうを選ぼうとします。しかしこの2つは、どちらも正しい。測っている期間が違うだけです。選ぶのではなく、どちらの期間の話をしているかを決める。 これが読み分けです。

前回調査との比較には注記がついている

調査は1年前(2025年11月)の自社調査との比較も載せています。ただしその際、サンプルが異なることを自ら注記しています("albeit with different samples")。

「1年で指名クエリのAI Overviews出現が逆転した」という形で引用するなら、この注記も一緒に運ぶ必要があります。比較の数字だけを取り出すと、同じ条件で経年変化を測ったように見えてしまいます。

確かなことと、確かでないこと

確かなこと(2026年10月27日にAhrefsの調査本文を確認した範囲):83%は2026年9月29日の単日観測値であり、本文1行目に日付が明示されていること。月平均は指名で7月61.3%・8月65.1%・9月73.3%、非指名で73.5%・74.7%・78.3%であり、差が12.2ポイントから5ポイントへ縮小したこと。分母が2026年7月から9月の米国デスクトップのGoogle検索結果232.8M件のクロール(指名92.5M・非指名140.2M)であること。ブランド名検索100件の別パネルで9月30日に63件、7月1日時点で有効98件中5件が出現し、63件中48件(76.2%)が1位・平均順位1.49だったこと。全文が見えた58件中、競合を論じたのが2件(3.4%)であり、57件の出典一覧中の競合所有サイトが1件だったこと。出典の上位がWikipedia 41件(71.9%)であること。前回調査との比較にサンプル差の注記があること。

確かでないこと:日本・モバイルの出現率は、この調査からは何も言えません。「指名キーワード」の定義は原典に書かれておらず、自社の集計と一致するかは確かめられません。AI Overviewsが出たときにクリックがどう動くかも、この調査は測っていません。第三者のプラットフォームが引用されることが問い合わせや売上にどう影響するかも、検証されていません(調査内では識者の見解として引用されているだけです)。そして調査自身が、ここで示した状態が今後も続く保証はないと書いています。

手元で試せる、最小の検証

自社のSearch Consoleを開いてください。そして、1つだけ確定させます。

自分が「指名クエリ」と呼んでいる検索語の一覧を、実際に書き出す。

やることは、クエリの一覧から自社名・ブランド名・サービス名を含むものを抽出して、件数を数えるだけです。表記ゆれ(カタカナ・英字・略称)を含めるかどうかも、このときに決めます。

これで何が得られるか。分母が1つ確定します。 「指名検索の83%」という数字と自社の観測を比べるときに、少なくとも自分の側の分母が何なのかは言えるようになります。

そのうえで、その一覧から5件を選んで、実際に検索してみてください。AI Overviewsが出たか出なかったかを記録します。5件なら数分で終わります。

5件中何件に出たかは、統計的な結論にはなりません。 米国デスクトップ232.8M件の調査と、自社の5件を同じ精度の観測として扱うことはできません。ただし、「自社の指名検索でAI Overviewsを見たことがあるか」という問いには答えが出ます。見たことがない状態で対策を検討するより、1件でも実物を見てから検討するほうが、判断材料が多くなります。

AI Overviewsが表示される検索で、表示から問い合わせまでをどの指標で分けて見るかは、AI Overviewsでクリックが減る時代のファネル設計で扱っています。この記事はその手前、引用された数字が何を数えた数字なのかを確かめる層です。

数字を自社に当てはめる前に立ち返る問い

立ち返りたいのは、「この比率の分母は何件で、いつ、どこで観測されたものか」という問いです。「何%か」ではありません。

83%と73.3%は、どちらも同じ調査の数字です。食い違っているのは数字ではなく、測った期間です。63%はさらに別のサンプルです。3つを並べて「どれが本当か」を考えはじめた時点で、問いの立て方が間違っています。

もう1つは、「この数字は、自分が気にしている懸念と同じものを測っているか」という問いです。出現率は、競合に奪われるかどうかを測っていません。それは別の数字——58件中2件——が示しています。懸念と測定対象がずれていると、数字がいくら増えても判断は進みません。

参考資料・引用元

よくある質問(FAQ)