Search Console の検索パフォーマンスを定期的に見ている人にとって、検索タイプの一覧は見慣れた場所です。その一覧に、見慣れない項目が増えています。
ここで起きやすいのは、「新しい流入経路が増えた」と読むことです。レポートに項目が増えれば、そこに入っている数字は新しく獲得したものだと感じられます。しかし、項目が増えたことと、流入が増えたことは別の出来事です。内訳が見えるようになっただけ、という可能性が残っています。
そして、どちらなのかを公式発表は書いていません。この記事では、2026年9月24日に発表された内容を確認したうえで、公式が答えていない3点を論点として立て、9月下旬を挟む前後比較をどう扱えばよいかを整理します。
30秒で要点
- Googleは2026年9月24日、Search Console に web multimodal 検索のパフォーマンス報告を追加したと発表した。追加先は検索結果のパフォーマンスレポートと生成AI機能のレポートの両方である
- 検索タイプの一覧では、従来の「Web」が「Web: text-based」と「Web: multimodal」の2項目に分かれている
- 公式発表には、(a) 過去データが遡って分割・再集計されるのか (b) これまで multimodal 分が従来の「Web」に含まれていたのか新規計上なのか (c) 他の検索タイプとの重複計上があるのか — のいずれについても記述が無い
- したがって9月下旬を挟む前後比較の増減は、施策の成果とも不調とも読めない。区分が変わった日を線で引き、注記を添えるのが先である
- 流入量・構成比・業種別の傾向といった数値は、本記事が参照した情報源には存在しない
なぜ「増えた分」だと読みたくなるのか
レポートに新しい項目が現れたとき、それを増分だと読む傾向には理由があります。
ひとつは、レポートが見せるのは常に「今の姿」だけだという性質です。Search Console の画面は、集計の区分が過去にどうだったかを教えてくれません。目の前にあるのは分かれた後の2項目だけで、分かれる前の「Web」がどちらを含んでいたかは画面上に残りません。残っていないものは、意識に上がりません。
もうひとつは、報告の都合です。検索パフォーマンスの数字を社内に報告している立場なら、増減の説明を求められます。「新しい経路が増えました」は説明として成立しますが、「区分が変わったので比較できません」は説明として弱く聞こえます。説明が成立する方の解釈に引っ張られるのは、担当者の怠慢ではなく、報告という行為の構造から来る圧力です。
その結果、確認されていない前提が、報告の土台として静かに使われます。「これまでは入っていなかった」という前提が、どこにも書かれていないまま共有されていく。これが本記事が解こうとしている混乱です。
2026年9月24日の公式発表に書かれていること
まず、確認できる事実を押さえます。Googleの検索セントラルブログの該当記事は、投稿日を "Thursday, September 24, 2026" と表記し、次の内容を伝えています。
追加された場所:web multimodal 検索のパフォーマンス報告が、検索結果のパフォーマンスレポートと、生成AI機能のレポートの両方に追加されました。片方だけではありません。
含まれるもの:Lens での検索、Android の Circle to Search、Google検索への画像アップロード、Chrome の右クリック「Search this image」が挙げられています。ここで原文の動詞に注意が必要です。使われているのは "includes"(含む)であり、「この4つに限る」とは書かれていません。4種類だけが対象だと読むと、列挙にない経路の数字をどう扱うかで判断を誤ります。
見る方法:パフォーマンスレポートの新しい multimodal 検索タイプのフィルタを使います。Export でデータをダウンロードし、他のツールで分析できるとも案内されています。フィルタが画面上のどこにあるか、既定でどちらが選ばれているかについては、発表文に記述がありません。
展開:2026年9月24日からグローバルに開始されました。該当するクエリからの流入があるサイトで、パフォーマンスレポートに指標が見え始めるとされています。展開の完了時期は書かれていないため、「9月24日時点で全サイトに出ている」とは読めません。
検索タイプの一覧では「Web」が2つに分かれている
Search Console のヘルプにある検索タイプの一覧では、従来ひとつだった「Web」が2項目に分かれています。
表が収まらない場合は、横にスクロールできます
| 検索タイプ | ヘルプの定義 |
|---|---|
| Web: text-based | 標準の検索バーに入力されたテキストのクエリ由来の、従来の検索トラフィックを含む |
| Web: multimodal | 画像が検索の一部として使われたウェブ検索結果を含む |
この定義は、2026年9月29日時点でSearch Console ヘルプの検索タイプ一覧を確認した記録に基づいています。なお、日本語の画面でどう表示されるかは確認できていません。実際の画面で日本語のラベルを確かめてから社内の手順書に書いてください。
ここで読み取るべきなのは、定義の文言そのものよりも、分かれ方の向きです。新しい項目が「Web」の外側に足されたのではなく、「Web」の内側が2つに割られた形で並んでいます。並び方としてはそう見える、ということです。
公式が答えていない3点が、この記事の中心
前節の「そう見える」を、事実として扱えるかどうかが分かれ目です。発表文を最後まで読んでも、次の3点には答えがありません。
- 過去データが遡って分割・再集計されるのか
- これまで multimodal 分が従来の「Web」に含まれていたのか、新規に計上が始まったのか
- 他の検索タイプとの重複計上があるのか
発表文は、導入・追加先・対象・閲覧方法・展開・フィードバック案内・署名で終わる短いものです。上の3点に相当する記述は、そのどこにも現れません。
確かなこと:2026年9月24日に報告が追加されたこと、検索タイプの一覧が2項目に分かれていること、対象として4つの経路が挙げられていること。これらは公式発表とヘルプの記載から直接確認できます。
まだ確かではないこと:上の3点すべてです。加えて、ここで言えるのは「本記事が参照した発表文に記述が無い」までであり、他の公式ドキュメントに記述がある可能性は排除できていません。
この区別は神経質に過ぎるように見えるかもしれませんが、「書かれていない」を「されない」と読み替えた瞬間に、報告の土台が推測になります。遡及されないと仮定して前後比較を出すのも、遡及されると仮定して出すのも、どちらも同じ種類の間違いです。
増えたと読む型、減ったと読む型
答えが無いまま数字を見ると、解釈は2方向に割れます。どちらも同じ材料から出てきます。
増えたと読む型:multimodal の行に数字が立っているのを見て、新しい流入が加わったと解釈します。前年同期比や前月比で「Web」合計が伸びていれば、その伸びを新経路の獲得として報告してしまいます。実際には内訳が見えるようになっただけかもしれません。
減ったと読む型:検索タイプのフィルタを text-based に合わせたまま、以前の「Web」と比べます。従来の「Web」が multimodal を含んでいたのなら、その分だけ数字は小さく出ます。施策が効かなくなったと判断して、問題のない取り組みを止める方向に動きかねません。
どちらの型も、自分が前提を置いたことに気づいていないという点で同じです。置いた前提が逆向きなだけで、構造は変わりません。
数字で追う場合は、分母と分子を先に固定してください。たとえば「multimodal 経由の比率」を見るなら、分子は検索タイプを multimodal でフィルタしたクリック数、分母は比較に使う検索タイプの合計クリック数、単位は%、期間は暦月で固定、といった形です。
ただしここにも留保が必要です。重複計上の有無が分からないため、「全体」を分母に置いたときにそれが各タイプの合計と一致するとは断定できません。できるのは、分母の定義を自分で明示的に固定し、前後で同じ定義を使うことだけです。定義を書き残さずに比率を出すと、数か月後に自分でも何を測ったか分からなくなります。この種のずれは、計測区分の変更が指標の意味を変える例として観測バイアス:GA4・広告の数字を「真実」だと思うと壊れるでも扱っています。
判断軸:数字を比べる前に、区分が変わった日に線を引く
順序を決めておくと、この手の変更に振り回されにくくなります。
- 区分が変わった日を、レポート上の縦線として扱う。2026年9月24日を挟む期間の比較は、同じ定義どうしの比較ではないかもしれない、という扱いにする
- 自分のアカウントでデータの開始時点を確認する。multimodal の行がいつから数字を持っているかは、遡及の有無についての唯一の手がかりである
- 前後比較を出すときは、増減の解釈ではなく注記を先に書く。「この期間に検索タイプの区分が変更されています」の一文を、グラフの下に置く
- 施策の評価は、区分の影響を受けない指標に寄せる。特定のページ群の掲載順位やクリック数のように、検索タイプの分割と無関係に追える単位を主軸にする
この順序なら、「増えた/減った」を説明しなければならない圧力に対して、「まだ比べられない」と答える根拠を持てます。レポートの限界を踏まえた読み方という点では、Search Consoleの生成AIレポートで分かること・分からないことと同じ構えです。
本記事が扱わないことも明示しておきます。マルチモーダル検索での表示を増やすための施策と、その効果については踏み込みません。本記事が参照した公式発表は、施策と結果の関係を示すデータを示していません。流入量・構成比・業種別の傾向といった数値も、参照した情報源には存在しません。
自分のSearch Consoleで確かめる最小の手順
ここまでの話を、15分で自分のデータに当てることができます。
- Search Console のパフォーマンスレポートを開き、検索タイプのフィルタを開く
- multimodal に相当する項目が選べるかを確認する(展開の完了時期は公式に書かれていないため、まだ出ていない場合もあります)
- 選べる場合、期間を可能な限り長く取って、その行の数字がいつから存在するかを見る
- 2026年9月24日より前にも数字があるか、その日以降にだけあるかを記録する
- 定例レポートのテンプレートに、区分変更の注記を1行追加する
4で分かるのは「自分のアカウントではどう見えているか」だけで、Googleの集計方針そのものではありません。それでも、推測で報告するより確実な材料になります。この確認をしないまま前後比較を出すことが、いちばん避けたい状態です。
AI検索まわりの設定と可視性の判断を合わせて考えたい場合は、AI検索に「載らない」を選べる時代:Googleの新設定と可視性の判断軸も参考になります。
判断の土台として押さえておくこと
- 新しい検索タイプが増えたとき、先に確認するのは「何が増えたか」ではなく「これまでその分はどこに入っていたか」である
- 2026年9月24日の公式発表は、追加の事実・対象・閲覧方法・展開開始を伝えているが、遡及・従来「Web」への包含・重複計上のいずれにも触れていない
- 「書かれていない」を「されない」と読み替えると、報告の土台が推測になる。どちらの向きにも断定しない
- 比率を出すなら分母の定義を自分で固定する。重複計上の有無が不明なため、各タイプの合計が全体と一致する保証はない
- 自分のアカウントで multimodal のデータ開始時点を確認することが、遡及についての唯一の手がかりである
集計の区分が変わったとき、数字が動いたのか定義が動いたのかを切り分ける作業は、Search Console に限った話ではありません。自社のどの指標がこの種の変更に弱いかを洗い出すところから整理したい場合は、状況を言語化するところから始めることができます。
状況を整理する(15分)より深く学ぶ
- Search Consoleの生成AIレポートで分かること・分からないこと:同じレポートの、何が読めて何が読めないかの整理
- 観測バイアス:GA4・広告の数字を「真実」だと思うと壊れる:計測の区分が変わると指標の意味も変わるという論点
参考資料・引用元
- Google Search Central Blog, web multimodal 検索のSearch Console報告についての投稿(投稿日表記 "Thursday, September 24, 2026"、署名 Harsh Kharbanda / Moshe Samet). https://developers.google.com/search/blog/2026/09/web-multimodal-in-sc (2026年10月9日確認)
- Google, Search Console ヘルプの検索タイプ一覧. https://support.google.com/webmasters/answer/7576553 (2026年9月29日確認。Claude Code 側からは到達できておらず、この確認は別エージェントの検証記録に依拠する)