Googleの「優先する情報源」はドメイン単位|/blog配下の記事が対象外になる理由とサイト構成の判断
自社メディアの検索流入が落ち続けていて、記事を増やしても改善の手応えがない。そうした状況で「AIに引用される書き方」(LLMO=AI検索向け最適化)を調べ始めた人ほど、見落としやすい変化があります。Googleが、読者自身が「この発行元を優先して見たい」と指定する仕組みを、公式ドキュメントとして整備し始めていることです。
この記事では、Google Search Centralの公式ドキュメント「Preferred sources」(ページ末尾の表記で2026年9月18日更新)の記載に基づき、この機能が記事単位ではなくドメイン単位で働くことが、サイト構成の判断に何を持ち込むのかを整理します。
30秒で要点
- Googleの preferred sources(優先する情報源)は、読者が選んだサイトのコンテンツを「トップニュース」で"preferred"バッジ付きで表示しやすくする機能。AI Mode・AI Overviews でもバッジが表示されることがある
- 対象はドメイン単位・サブドメイン単位のサイトのみ。
example.com/blogのようなサブディレクトリは対象外と公式に明記されている - 専用ボタンなどの実装方法は3種類紹介されているが、どれも必須ではない
- 指定が流入をどれだけ増やすかを示すデータは、確認した範囲では存在しない。効果は仮説段階として扱う
- 判断の焦点は「どの記事を書くか」から「読者に何の単位で選んでもらうか」へ一つ増えた
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| ドメイン | example.com のような、サイト全体を表す住所の単位 |
| サブドメイン | blog.example.com のように、ドメインの前に名前を付けて切り分けた単位 |
| サブディレクトリ | example.com/blog のように、同じドメインの中でフォルダとして切り分けた単位 |
| トップニュース(Top Stories) | Google検索結果の中で、ニュース性のある記事をまとめて表示する枠 |
| AI Overviews / AI Mode | Google検索で、AIが生成した要約を表示する機能と、AIとの対話形式で検索する機能 |
検索の「単位」が一つ増えたと考えると整理しやすい
従来の検索で私たちが追いかけてきたのは、クエリ(検索語)ごとの順位です。同じ記事でも、検索語が変われば順位も変わります。毎回入れ替わる変数を、記事単位で最適化してきたと言えます。
preferred sources が持ち込むのは、これとは性質の違う単位です。読者が一度「この発行元を優先する」と選べば、その選択は個々の検索語をまたいで持ち越されます。毎回変わる変数ではなく、一度決めたら持ち越される定数に近いものが、検索の中に一つ加わったことになります。
ここで最初に疑ったのは、「これはニュースサイト向けの話で、事業会社のオウンドメディアには関係ないのではないか」という点でした。表示先の中心がトップニュースである以上、その見方には一理あります。ただ公式ドキュメントは、AI Mode・AI Overviews でも、そのサイトを選んだユーザーに"preferred"バッジが表示されうると書いています(Search Consoleで「Search generative AI features」の対象に含まれていることが条件の一部)。ニュース枠に限らず、AIが要約を返す場面にもこの「指名」が入り込む設計になっている以上、ニュースサイト以外にとっても無関係とは言い切れません。
公式ドキュメントが明記している「対象になる単位」
この機能で最も実務に響くのは、対象範囲の記述です。公式ドキュメントは次のように書いています。
Only domain-level and subdomain-level sites are eligible to appear in the source preferences tool... the subdirectory https://www.example.com/blog isn't eligible.
選ばれる単位はドメインかサブドメインであり、サブディレクトリは選べない、ということです。example.com 全体、あるいは blog.example.com は指定の対象になりえますが、example.com/blog だけを切り出して指定してもらうことはできません。
これを自社に当てはめると、次のようになります。コーポレートサイトの中に /blog や /column を置いてメディアを運用している場合、読者が「このメディアを優先したい」と思っても、実際に指定できるのはコーポレートサイトを含むドメイン全体です。当サイトも記事を /blog 配下に置いているため、指定されうるとしたら記事単位ではなく ___example.com0___ というドメイン単位になる、というのが公式の記述から導ける推論です(Googleが当サイトを個別に評価した結果ではありません)。
なぜ「記事の質を上げれば選ばれる」と考えてしまうのか
SEO(検索エンジン最適化)の経験が長い人ほど、「良い記事を書けば、読者はその記事を評価してくれる」という前提で考えます。これまでの検索では、評価の単位がほぼ記事(URL)だったからです。その延長で preferred sources を見ると、「指名されるような記事を書こう」という発想になりやすい。
しかし、読者が指定するのは記事ではなく発行元です。読者の頭の中で起きているのも、「この記事が良かった」ではなく「このサイト(発行元)の情報なら優先して見たい」という判断のはずです。記事単位で積み上げてきた評価が、発行元の単位へ一段まとめられて使われる。この単位のずれに気づかないまま記事の改善だけを続けると、サイト構成という別の変数が判断から抜け落ちます。
さらに、サイト構成は後から変えるほどコストが高い判断です。URLの移転はリダイレクトや内部リンクの張り替えを伴います。「今は関係ない」と後回しにしやすい一方で、後になるほど動かしにくい。この非対称が、見落としを起こしやすくしています。
実装は「必須ではない」と明記されている
公式ドキュメントは、読者に指定してもらうための導線として3種類の実装方法を紹介しています。2行のタグで設置する標準的なJavaScript実装、JavaScriptで細かく制御する高度な実装、指定画面へ直接飛ばすディープリンクです。
そのうえで、これらは読者に見つけてもらうための例であって、優先する情報源として表示されるために必須ではない、と明記しています。
It's not required to do them in order to appear as a preferred source.
したがって「ボタンを付けたかどうか」は、対象になるかどうかの条件ではありません。先に決めるべきは、読者にどの単位で選んでもらう構成になっているかのほうです。
この1か月で「読者が発行元を指定する」系の文書が続いている
Google Search Centralの「Latest documentation updates」を見ると、2026年8月20日から9月18日までの約1か月に、次の更新が並んでいます。
- 8月20日: preferred sources のカスタムボタンを追加
- 9月8日: 地域別の検索体験に関するドキュメントを追加
- 9月16日: Search profile バッジの新しいガイドを追加
- 9月18日: aggregator / supplier unit のローカル対応
ここから言えるのは、読者や地域が発行元を指定・識別する系統の文書が、短期間に続けて整備されているということまでです。これは文書更新の頻度であって、機能がどれだけ使われているか、どれだけ効果があるかを示すものではありません。
背景にあるのは、クリックされない検索の増加
この変化を、「検索結果からサイトへクリックされにくくなっている」という流れと並べて見ておく必要があります。SparkToroの調査記事「In 2026, less than one-third of Google searches still send a click」(2026年6月8日公開、データ提供はSimilarweb)は、次の数値を示しています。
- ゼロクリック率の定義: 分母は米国のGoogle検索(Similarwebのパネルで計測されたデスクトップ+モバイル)、分子はどのリンクもクリックされずに終了した検索。単位は%
- 2026年1〜4月: 68.01%
- 2024年: 60.45%
ただし、2024年のデータはDatos、2026年はSimilarwebと提供元が異なり、著者自身が「apples and oranges(本来比べられないもの同士)」の比較だと注記しています。また米国のデータであり、日本にそのまま当てはめることはできません。
同記事は上昇の主因について、全検索の20%以上に表示されるようになったAI Overviewsの拡大が「ほぼ確実な」要因であり、AI Overviewsが表示されるとクリック率が60%近く(nearly 60%)下がると述べています。これはSparkToroの分析であり、Googleが公表した数値ではありません。一方で、AI Mode経由の検索は同期間で全検索の0.34%にとどまるとも書かれています。クリックされにくさの原因をAI Modeに帰すのは、このデータからは無理があります。
クリックが起きにくくなるほど、「検索語ごとの順位」だけで読者との接点を設計する前提は弱くなります。その中で、読者が発行元を指名する単位が用意されつつある。この二つを並べると、サイト構成を判断材料に加える理由が見えてきます。
確かなことと、まだ確かではないこと
確かなこと: Googleの公式ドキュメントが、preferred sources の対象をドメイン単位・サブドメイン単位に限り、サブディレクトリを対象外と明記していること。実装方法が3種類紹介され、どれも必須ではないと書かれていること。2026年8月20日〜9月18日に関連ドキュメントの追加・更新が続いていること。
まだ確かではないこと: 優先する情報源に指定されることが、実際の流入をどれだけ増やすのか。本記事で確認した公式ドキュメントと調査記事の範囲には、効果を裏付ける独立したデータはありませんでした。「指名される構成に変えれば流入が戻る」という主張は、現時点では仮説にとどまります。
サイト構成を決めるときに置いておきたい判断軸
新しいメディアや発信の置き場所を決めるときは、「検索で上位を取れるか」に加えて、「読者に何の単位で選んでもらいたいか」を一緒に決めること。
- コーポレートサイトとメディアを同じ発行元として選ばれてよいなら、サブディレクトリ運用のままでも筋は通る
- メディアを独立した発行元として選ばれたいなら、サブドメインや別ドメインが候補になる。ただしその場合、既存ドメインで積み上げた評価とどう分けるかという別の判断が必要になる
- どちらを選ぶにしても、効果が未実証である以上、URLを移転する理由をこの機能だけに置かない
この機能のために今すぐ構成を変えるべきだ、という話ではありません。構成を決める・見直すタイミングが来たときに、「選ばれる単位」という判断軸を一つ加えておく、というのが現時点での妥当な距離感です。
自分でも試せる、最小の検証
自社が運用している発信の置き場所(コーポレートサイト、ブログ、採用ページ、サービスサイトなど)をすべて書き出し、それぞれのURLが「ドメイン」「サブドメイン」「サブディレクトリ」のどれに当たるかを分類してみてください。そのうえで、読者が「優先する情報源」として指定できるのはどの単位かを一行ずつ書き添えます。
「ブログを選んでほしいのに、指定できるのはコーポレートサイト全体だった」というずれが見つかれば、それがサイト構成を判断材料に加える理由です。ずれが無ければ、今の構成のまま記事の改善に集中してよい、という判断にもなります。
クリックが減る前提で「指名」と「問い合わせ」をどう設計するかは、AI Overviewsでクリックが減る時代:SEO/LLMOで"指名"と"問い合わせ"を増やす設計図で扱っています。
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状況を整理する(15分)