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統計・データサイエンス

回帰分析入門:データから関係性を見つけ、未来を予測する

2025年10月19日
最終更新: 2026年10月8日
11分で読めます

この記事でわかること

回帰分析の係数・残差・決定係数・p値を、架空の5店舗の広告費と問い合わせ数で順に計算します。単回帰と重回帰の式、単位と外挿の注意、検定の仮定、相関と因果の違いを整理。高いR²だけで予算増額を決めず、データの定義、残差、別期間での予測誤差まで確認し、分析結果を判断メモに残す手順を具体例付きで紹介します。

2026年10月8日にstatsmodels 0.15のOLS/WLS/GLS本文とscikit-learnの交差検証本文を再確認した。回帰は変数間の関係を要約したり未見データを予測したりするモデルで、係数・R²・p値・予測誤差は別の問いに答える。独立性、分散、自己相関、欠測、外れ値、設計、データ分割を点検し、観察データの係数や相関をそのまま原因・施策効果・将来保証と読まない。

広告費と問い合わせ数の関係を知りたいとき、回帰分析は「観測した範囲で、どのような関係があるか」を式にできます。ただし、傾きが正でも、広告費を増やせば同じだけ問い合わせが増えるとは限りません。繁忙期に予算も需要も増える、といった別の説明が残るからです。

この記事では、実在の顧客や施策成果を使わず、架空の5店舗の数値で係数・残差・R²を計算します。計算できること、統計的な推測、事業判断を順に分けて読みます。

30秒で要点

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知りたいこと最初に見るものそれだけでは分からないこと
どの程度一緒に変わるか散布図、係数と単位施策の因果効果
手元のデータに合うか残差、R²未知のデータでの予測精度
係数の不確かさ標準誤差、区間、検定の前提投資する価値、仮説が正しい確率
実務に使えるか別期間・別対象での誤差、費用、運用条件将来の成果保証

平均と「観測値から予測値を引く」計算が分かれば、以下の例は追えます。まず単位を揃え、次に式を読みましょう。

単回帰:係数と誤差を区別する

説明変数が1つの直線モデルは次の形です。

yi = β0 + β1xi + εi

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記号この例での意味
x同じ集計期間の店舗別広告費。単位は10万円
y同じ期間の問い合わせ数。単位は10件
β₀モデル上でxが0のときの切片
β₁xが1単位異なるときの、モデルが表すyの平均的な差
εモデルで表しきれない誤差。直接観測できる量ではない

データから推定した係数にはハットを付け、予測値を「ŷ」、観測値との差を「残差e」と呼びます。

ŷi = β̂0 + β̂1xi、 残差 ei = yi - ŷi

最小二乗法が最小にするのは残差の二乗和です。残差をそのまま足すと正負が打ち消し合うため、ずれの大きさを比べられません。NISTの最小二乗法の説明も、この基準と傾き・切片の推定式を示しています。

架空の5店舗から傾き0.9を計算する

以下は計算練習用に作った5点です。同じ長さの期間、同じ問い合わせ定義で集計した、と仮定します。実際の店舗の予算配分をランダム化したデータではありません。

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店舗広告費x(10万円)問い合わせy(10件)予測値ŷ(10件)残差e(10件)残差の二乗
A122.2-0.20.04
B233.1-0.10.01
C354.01.01.00
D444.9-0.90.81
E565.80.20.04

平均はxが3、yが4です。各行で平均からの差を作ると、xの偏差の二乗和は10、xとyの偏差の積の和は9になります。

β̂1 = [Σi(xi - x̄)(yi - ȳ)] / [Σi(xi - x̄)2] = 9/10 = 0.9

β̂0 = ȳ - β̂1x̄ = 4 - 0.9 × 3 = 1.3

したがって予測式はŷ=1.3+0.9xです。この表では、広告費が10万円異なる店舗同士について、予測される問い合わせ数に9件の差があります。「10万円追加すれば9件獲得できる」という効果測定の結果ではありません。

切片1.3も、「広告なしで13件集まる」と実証した値ではありません。表の広告費は10万〜50万円であり、x=0は観測範囲の外です。予算100万円への外挿も、この5点だけでは支えられません。新規顧客・商圏・広告内容の違いを調べる必要があります。

架空5店舗の広告費と問い合わせの散布図、予測式1.3+0.9xと残差を示す2段の図
架空5店舗の観測点、最小二乗直線と残差。R²0.81は手元の当てはまりの指標であり、因果効果や的中確率ではありません。

R²は0.81。でも「81%の確率で当たる」ではない

平均y=4を全店舗の予測に使うと、観測値との差の二乗和は10です。今回の直線では残差の二乗和が1.9なので、次の値になります。

R2 = 1 - [Σi(yi - ŷi)2] / [Σi(yi - ȳ)2] = 1 - 1.9/10 = 0.81

これは、この標本で平均だけを使う予測に比べ、残差平方和が81%小さくなったという読み方です。問い合わせの81%を広告が生んだ、予測が81%の確率で的中する、という意味ではありません。

ここで0〜1になるのは、切片を含む最小二乗法を、当てはめに使った非一定のyで評価する条件です。別データに対する同じ指標は負にもなります。yがすべて同じなら分母が0になり、この式では定義できません。ソフトが便宜上0や1を返す場合もあるため、設定を確かめます。scikit-learnの公式説明は、負値と一定のyの扱いを明記しています。

R²が1になるデータはあり得ます。それでも因果や将来予測を保証しません。同じ行で説明変数を追加すると通常のR²は下がらないため、自由度調整済みR²や、学習に使っていない対象での誤差も検討します。今回の5点は計算練習に留め、モデルを運用する根拠にはしません。

p値は何を条件にして読むか

係数の検定では、たとえば「母集団の傾きβ₁=0」を帰無仮説にします。帰無仮説と検定モデルの前提の下で、観測した検定統計量以上に極端な値が出る確率がp値です。β₁=0である確率ではありません。

この5点について、直線の条件付き平均が適切で、誤差が独立・等分散・正規分布、説明変数に関する条件も妥当だと仮定した古典的な両側t検定を、計算練習として行います。5観測から切片と傾きの2係数を推定するため残差自由度は3です。

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計算値
残差分散の推定値:1.9÷3約0.6333
傾きの標準誤差:√(0.6333÷10)約0.2517
t値:0.9÷0.2517約3.5762
自由度3の両側p値約0.0374
NISTの係数検定は、係数を標準誤差で割るt値と、その分布の前提を説明しています。モデルの仮定は、数式を計算しただけでは確認できません。5点の架空表で正規性や独立性が十分に検証された、と読むこともできません。

0.0374を見て「広告効果がない確率は3.74%」「効果が96.26%の確率である」とは言えません。0.05を境に事業判断を自動化することも避けます。効果量、不確かさ、分析対象・除外・試したモデル、追加コストを併せて説明するのが必要です。ASAの声明も、p値は仮説の真偽の確率や効果の大きさを表さず、閾値だけで判断しないとしています。

重回帰:変数を足す前に、何を固定するか決める

説明変数が複数なら、旧来の単回帰式を次のように広げます。

yi = β0 + β1x1i + β2x2i + … + βpxpi + εi

たとえばx₁を広告費、x₂をセール期間なら1・通常期間なら0とする変数にできます。β₁はモデルに入れた他の変数を固定したときの関係です。実際に条件が揃う店舗がほとんどなければ、係数の解釈は不安定になります。

架空の式の読み取り例として、ŷ=1+0.5x₁+2x₂を考えます。これは上の5店舗から推定した式ではありません。広告費x₁=4なら通常期間の予測は3、セール期間は5で、差は2(20件)です。セールを実施すれば20件増えるという因果の証明にはなりません。

訪問者数やページビューを両方入れる場合は、強く連動していないか確認します。係数の符号がモデルごとに反転するなら、単に大きい係数を「最重要」と並べないでください。単位も異なるため、係数の絶対値だけで順位は付けられません。また、広告の結果として増える訪問者数を固定すると、広告の総効果とは違う問いになります。予測用の変数選択と因果推論用の調整を混ぜないことが必要です。

実務で残す確認表

NISTのモデル確認は、R²だけでなく残差を見る重要性を説明しています。次の表は、Web業務で使うための作成者による確認例です。

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観察・用途確認すること次の行動
残差が曲線状に並ぶ直線の形が足りない可能性変換や別の関数形を検討し、別データで確認
予測値が大きいほど残差が広がる等分散の前提標準誤差の扱いを含めて分析方法を見直す
日付順に残差が続けて同じ符号時系列の依存・季節性ランダム分割だけに頼らず、過去から未来への検証を設計
1点を外すと傾きが大きく変わる記録誤りか、有用な例外か理由なく除外せず、含む場合と含まない場合を説明
目的が来月のLTV予測予測時点で知り得る変数か将来の購買結果が説明変数に混ざっていないか確認
目的が購入・離脱の0/1予測目的変数の型ロジスティック回帰など、確率を扱うモデルも検討

ページ速度とCVRの関係でも、分母・端末・流入・期間を揃えます。「0.1秒改善で何%変わるか」を係数だけで因果効果として報告しないでください。相関を見つけたら、条件を明示した実験計画や比較設計につなげます。

記入済みの判断メモ

対象は架空5店舗、同じ期間の広告費と問い合わせ数。観測範囲内では傾き0.9、R²0.81。商圏と需要期の違いは未調整。現時点の結論は関連の記述であり、予算増額の効果は未確認。次は問い合わせ定義を揃え、予算配分の理由を記録し、実験可能性を検討する。

目的、対象、式、適用範囲、未確認の条件、次の判断を1枚に残せば、「高いR²だけが一人歩きする」ことを防ぎやすくなります。

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よくある質問(FAQ)