AI検索に「載らない」を選べる時代:Googleの新設定と可視性の判断軸
これまでSEO(検索エンジン最適化。検索エンジンに見つけてもらい、評価してもらう取り組み)・LLMO(AI検索向け最適化。AIの回答に引用されやすくするための設計)の世界では、「どうすればAIに引用されるか」という一方向の問いしかありませんでした。2026年6月、Googleが公式ブログで発表した設定変更は、その手前に新しい分岐点を作りました。「そもそも載るかどうかを、自分で決める」という選択肢です。
この記事では、Googleが追加すると発表した新しい設定の中身を整理したうえで、なぜ多くのサイトオーナーがこの選択肢の存在に気づかないまま初期設定を受け入れてしまうのか、そして「載ったほうが得なサイト」をどう見分けるかを、判断軸として渡します。
30秒で要点
- GoogleはSearch Consoleに、AI Overviews・AI Mode・Discover内のAI Overviewsへの掲載・グラウンディング利用を個別にオプトアウトできる設定を追加すると発表した
- この設定は通常の検索順位のランキング信号としては使われないと公式に明記されている
- 現時点は英国の一部サイトオーナー限定のテストで、日本への展開時期・仕様は未確定
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| グラウンディング | AIが回答を生成する際に、根拠として特定のWebページの情報を参照・引用すること |
| オプトアウト | 初期設定では有効になっている機能を、利用者側の操作で個別に無効化すること |
| ランキング信号 | 検索結果の順位を決めるためにGoogleが評価要素として使うデータ |
この記事の仮説
- 仮説: AI経由の露出は、指名検索や信頼構築に資するサイトもあれば、要約材料として使われるだけで実質的な便益が乏しいサイトもある。「載る/載らない」を自分で選べる以上、判断基準を持たないまま初期設定を受け入れるのはもったいない。
- 対象外: Search Console上の具体的な操作画面のスクリーンショット手順や、AI Overviews自体の表示ロジック・アルゴリズムの詳細には踏み込みません。すでに公開しているAI Overviewsでクリックが減る時代の集客設計やGoogle検索のAIモードとは何かと役割を分け、この記事は「載る/載らないを選ぶ」という新しい論点に絞ります。
- この記事が助ける判断: 新しい設定が自社にも表示されたとき、迷わず「載せる」か「外す」かを決められる状態を作ることです。
この記事を読む前に
- AI Overviewsでクリックが減る時代の集客設計:AI経由の認知・信頼・問い合わせへのつなげ方
- Google検索のAIモードとは?:AI Overviews・AIモードの前提整理
- AI時代のWeb意思決定の優先順位:AIをめぐる判断をどう順序立てるか
1. Search Consoleの新しい設定で何が変わったのか
2026年6月3日、Googleは公式ブログ(サイトオーナー向けの新しい機会・コントロール・インサイトについて)で、Search Consoleに新しいトグル(切り替えスイッチ)を追加すると発表しました。この設定により、サイトオーナーは自サイトについて、次の3つの掲載面への掲載・グラウンディング利用を個別にオプトアウトできるようになります。
- AI Overviews(検索結果に表示されるAI生成の要約)
- AI Mode(より対話的なAI検索体験)
- Discover内のAI Overviews
ここで押さえておくべき最も重要な一文は、公式ブログにこう明記されている点です。この設定は、通常の検索結果のランキング信号としては使われない。
これまで「検索に出るかどうか」と「AI回答に使われるかどうか」は、事実上ワンセットの現象として扱われてきました。掲載を拒否すれば検索順位にも影響するのではないか、という不安がどこかにあったはずです。今回の変更は、この2つを制度として切り離しました。AI機能への掲載可否は、通常の検索順位とは別のレイヤーの判断として扱えるようになったということです。
前提として確かなこと・まだ不確かなこと
ここで一度、確かなことと不確かなことを分けておきます。
確かなこと(公式ブログという一次情報で確認できる範囲):
- Search Consoleに、AI掲載・グラウンディング利用を個別にオプトアウトできる設定が追加されると発表されたこと
- その設定が、通常の検索順位のランキング信号としては使われないと明記されていること
まだ不確かなこと:
- 現時点でこのテストの対象は、英国の一部サイトオーナーに限定されています。日本を含む他地域への展開時期や、テスト後に細部の仕様がどう変わるかは、公式に明言されていません。
この記事を「日本のサイトオーナーがすでに設定できる操作マニュアル」として読むと前提を誤ります。あくまで「近く自分たちにも選択肢が来たときに、どう判断するかを準備しておく」ための記事として読んでください。
2. なぜ気づかないまま初期設定を受け入れてしまうのか
新しい設定が来たとき、多くのサイトオーナーは、この選択肢の存在にすら気づかないまま、Googleの初期設定(オプトイン、つまり掲載される状態)をなんとなく受け入れることになりやすいと考えられます。ここには、いくつかの理由が重なっています。
1. 「ランキング設定」だと誤解しやすい
Search Console内の新しい項目は、既存の検索パフォーマンス系の設定と近い場所に置かれる可能性が高く、「触ると順位が下がるかもしれない」という漠然とした警戒感から、そもそも開かずに放置されやすくなります。ランキング信号として使われないと明記されているにもかかわらず、その一文を読まずに設定画面自体を避けてしまう、という構造です。
2. 初期設定がすでに「載る」側になっている
人は、選択肢を能動的に変更するより、提示された初期設定をそのまま受け入れる傾向があります(現状維持バイアス)。オプトインが初期状態である以上、「変更しない」という選択そのものが、実質的に「AI経由でずっと使われ続けることを選ぶ」という判断になります。多くの担当者は、この構図に気づかないまま時間が過ぎていきます。
3. 判断材料がまだ手元にない
「載ったほうが得か、載らないほうが得か」を判断するための基準を、事前に持っている担当者はまだ少数です。基準がないまま設定画面だけを見せられても、判断のしようがなく、結果として「とりあえず様子見(=初期設定のまま)」になります。
この3つが重なると、「選べるようになったのに、実質的に選ばれていない」という状態が生まれます。次の章では、判断のための基準を先に用意します。
3. 「載ったほうが得なサイト」をどう見分けるか
「載ったほうが得か」を感覚で判断すると、業種のイメージだけで決めてしまいがちです。ここでは、判断に使える指標を分母・分子・単位まで含めて定義します。
指標1: 指名検索率
- 定義: 指名検索セッション数 ÷ 総オーガニックセッション数(単位: 割合)
- 見方: この比率が高いサイトは、すでに「名前を知っている人が探しに来る」構造ができています。AI回答内でサイト名や企業名が言及されることは、この指名検索の入口を増やす方向に働きやすく、載ることの便益が相対的に大きいと考えられます。
指標2: 情報完結度
- 定義: そのページが扱う問いに対して、AIの要約だけで読者の目的が達成されてしまう度合い(単位: 定性評価。「要約だけで完結する/しない」の二値、または3段階程度の目安)
- 見方: 定義の説明・単純な事実確認・手順の要点だけで完結する情報は、要約されるだけでクリックにつながりにくく、無償で学習・要約材料を提供するだけになりやすい構造です。一方、判断の分かれ目や、前提によって答えが変わるような複雑な問いを扱うページは、要約だけでは読者の目的が達成されず、詳細を読みに来てもらう動機が残ります。
この2つの指標を、AI経由の掲載を検討したいページごとに当てはめると、「載る」「載らない」を勘ではなく基準で判断できる状態に近づきます。指名検索率が低く、かつ情報完結度が高いページ(=単純な事実確認で終わるページ)ほど、オプトアウトを検討する価値が上がります。逆に、指名検索率が高く、情報完結度が低いページ(=詳細を読まないと判断できないページ)は、載ることの便益が大きいと考えられます。
4. 判断に迷ったときに立ち返る3つの問い
新しい設定が自社にも表示されたとき、次の3つの問いに沿って考えると、判断がぶれにくくなります。
- AI回答内での言及は、自社の指名検索や信頼構築に資するか
指標1(指名検索率)が高いページ・サイトほど、この問いへの答えは「はい」に近づきます。
- AI経由の要約だけで用が済んでしまう情報を、無償で提供していないか
指標2(情報完結度)が高い、つまり要約だけで完結してしまうページほど、オプトアウトの検討価値が上がります。
- この判断を、測定可能な形で継続的に見直せるか
一度決めた設定を放置せず、Search Consoleの新しいインサイト(後述)で定期的に見直す前提を持てているか、が問われます。
これら3つの問いに、業種や慣習ではなく自社のページ単位のデータで答えられる状態を作ることが、この新しい選択肢を「使いこなす」ということです。
5. Search Consoleで確認する最小の手順
主張を検証する最小の一歩として、次の手順を提案します。
- Search Consoleにログインし、サイトオーナー向けの新しい設定・インサイトの項目が表示されているかを確認する。表示されていない場合、現時点ではテスト対象地域に自社が含まれていないと考えられます。
- 表示されていた場合、設定を変更する前に、対象ページの指名検索率(前述の指標1)を実測する。Search Consoleやアクセス解析ツールで、自社名・サービス名を含むクエリのセッション数を、総オーガニックセッション数で割ることで概算できます。
- 主要ページを2〜3本選び、それぞれについて情報完結度(前述の指標2)を、担当者内で「要約だけで完結する/しない」の二値で仮評価してみる。
- 上記2つの結果を、本記事の3つの問いに当てはめて、載せる・載せないの仮判断を1ページずつ言語化しておく。実際に設定変更を行うかは、この仮判断が固まってからで十分です。
この検証は、設定がまだ表示されていない担当者でも今日から始められます。設定が来てから慌てて判断するより、判断材料を先に揃えておくほうが、意思決定の質は上がります。
判断の土台として押さえておくこと
- 確かなこと: Search ConsoleにAI掲載可否を個別にオプトアウトできる設定が追加されると発表され、この設定は通常の検索順位のランキング信号としては使われないと明記されている
- まだ不確かなこと: 現時点は英国の一部サイトオーナー限定のテストで、日本への展開時期・仕様は未確定
- 判断軸: 指名検索率と情報完結度の2つの指標で、ページ単位に「載ったほうが得か」を言語化しておく
- 最小の一歩: Search Consoleの新しい設定・インサイトの有無を確認し、主要ページの指名検索率を先に実測しておく
「載る/載らない」の二択そのものより、その手前にある「自社にとってAI経由の露出は何のためか」という問いに、先に自分の言葉で答えておくことが、この新しい選択肢を意味のある形で使うための前提になります。
この記事で扱ったような可視性戦略の前提を、自社のページ構成に照らして整理したい場合は、状況を言語化するところから始めることができます。
状況を整理する(15分)記事内のFAQはフロントマターに記載しています。
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